Eコマース事業を始めるにあたって、ECにはどのような事業形態があるのか気になる人は多いでしょう。この記事では、EC事業における6つのビジネスモデルと具体例を紹介します。自分の事業に適したECビジネスモデルの選び方も解説しますので、参考にしてください。
ECの6つのビジネスモデル
BtoC
BtoC(Business to Consumer)は、企業が消費者に商品を販売するビジネスモデルです。企業が運営するネットショップを個人消費者が訪問し、商品やサービスを購入します。BtoC ECでは、企業がサプライヤーから商品を大量に低価格で仕入れ、消費者へと販売することで利益を出すのが主流です。
しかし、BtoCは同じ市場で多くの企業が営業しているため競争が激しく、自分の商品を選んでもらえるように差別化することが必要となります。たとえば、オリジナルデザインの商品を販売したり、市場に出回っている商品では満たせていない消費者のニーズを探り、それに応えられる商品やサービスを提供したりするなどの工夫が必要です。ネットショップなどを通じて顧客データを集め、販売戦略や仕入れに役立てることもできます。ブランド構築によって差別化するのも有効でしょう。
DtoC(Direct to Consumer)はBtoCの一種ですが、製品やサービスの製造業者が直接消費者に商品を販売する点がBtoCとは異なります。卸売業者や小売店を通さずに販売するため、中間コストを削減できるのが利点です。また、企業が消費者と直接関われるようになるため、顧客とより深い関係を築けるのもDtoCのメリットといえるでしょう。一方、企業が集客やマーケティング、顧客対応を行う必要があり、製造以外の業務が増えるというデメリットがあります。
BtoCの事例
COHINA(コヒナ):COHINAは、小柄な女性を対象に衣服を販売しているアパレルショップです。身長が140~150cm代の女性にターゲットを絞り、特定の顧客を獲得するニッチ戦略を取っています。
FIRE KIDS(ファイアーキッズ):FIRE KIDSは、1940年代から2000年代のヴィンテージ・アンティークウォッチを専門的に取り扱う時計店です。専門店とすることでアンティークウォッチのコレクターなど特定の顧客を獲得しているだけでなく、似合う時計を提案するサービスや、精度測定や磁気抜きの無料サービスなどを提供し、消費者のニーズに応えて他社と差別化しています。
土屋鞄製造所:土屋鞄製造所はランドセルなどの革製品を製造するメーカーで、DtoC ECサイトも運営しています。作り手がAboutページなどで直接メッセージを伝えることで、より製品の魅力が伝わりやすくなっています。
BtoB
BtoB(Business to Business)は、企業が他の企業に対して商品やサービスを提供することで利益を得る事業形態です。企業のホームページやネットショップの訪問者は企業で、購入者は企業です。たとえば、マーケティング会社が自社ホームページで分析ツールを販売し、他企業がそれをオンラインで購入・ダウンロードするなどが当てはまります。
BtoB ECは、企業単位での取引となるため一度の取引額が大きくなる傾向があります。また、BtoB取引は長期的な関係を築きやすく、販売する商品やサービスによっては限られた顧客だけで安定した収益が見込めるため、マーケティングに費やす労力や費用が比較的少なく済むのも特徴です。
BtoBの事例
スイッチサイエンス:スイッチサイエンスは、電子部品を扱う企業で、主に企業向けに製品を提供しています。電子機器の開発やコンサルティングのサービスも提供し、顧客と長期的に取引できる仕組みもできています。
アリババ:アリババは、世界中のサプライヤーと企業をつなげるBtoB ECサイトです。企業はアリババで大量の商品を低価格で購入できるほか、ドロップシッピング業者やホワイトレーベル対応商品を見つけることもできます。
CtoC
CtoC(Consumer to Consumer)は、不要になった商品を販売するなど、消費者同士が取引を行うビジネスモデルです。CtoCモデルの魅力は、個人間で手軽に売買ができる点です。販売者は不要な物品を売却したり、ハンドメイド製品を販売したりして収益を得る一方、購入者は手頃な価格で商品を購入できたり、市販されていないユニークな製品を手に入れたりすることができます。
CtoCの事例
メルカリ:メルカリは、フリマアプリの一種で、利用者はスマートフォンを使って簡単に商品を出品でき、購入者も手軽に商品を検索して購入できます。サイト上で商品の魅力を紹介して販売促進を図ることもあり、ソーシャルコマース的な要素があります。
Yahoo!オークション:Yahoo!オークションは、不要なアイテムをオークション形式で販売できるプラットフォームです。出品者は商品を掲載し、購入希望者が入札することで価格が決まります。
Etsy(エッツィー):Etsyは、ハンドメイド製品の販売者と購入者をつなげる世界規模のハンドメイド製品マーケットプレイスです。販売者は自身のショップをEtsy内で持つことができ、購入者にメッセージやクーポンを送ったり、マーケティングツールを利用したりして販売を促進することもできます。
CtoB
CtoB(Consumer to Business)とは、個人が企業や組織に対して商品やサービスを提供するビジネスモデルのことです。個人が自らのスキルを活かして、企業のニーズに応える商品やサービスを提供します。たとえば、フリーランスのデザイナーが企業のロゴやウェブサイトを制作するケースなどが挙げられます。
CtoBの利点は、個人が自身の専門知識やスキルを比較的大きなプロジェクトに活かせる点にあります。企業側にとっても、実施するプロジェクトに必要なスキルやコストなどをもとに、最適な取引先を選べるメリットがあります。
CtoBの事例
クラウドワークス:クラウドワークスは、個人が企業向けに業務を提供するプラットフォームです。企業側が求める人材や業務内容、報酬といった案件の詳細を記載し、それを見た個人がシステム上で企業に連絡を取ることで仕事を獲得します。
写真AC:写真ACでは、個人の写真家が自ら撮影した写真を企業に販売できます。写真ACに提供した写真を企業がダウンロードすることで、写真を提供した個人は報酬を得られます。
BtoA
BtoA(Business to Administration)は、BtoG(Business to Government)とも呼ばれ、企業が政府機関や自治体に対して商品を販売するビジネスモデルです。企業が公共事業に参加したり、政府機関のニーズに応じたサービスを提供したりするケースが一般的です。政府機関が事業者に直接依頼することもありますが、事業者自身が一般競争入札に参加して仕事を得る方法が一般的です。一般競争入札とは、政府機関が入札の参加条件を事前に公表して入札を行い、最も安価でサービスを提供できる事業者と契約を結ぶ仕組みです。
BtoAモデルは、高額な取引が見込めるため収益性が高いことが多いです。しかし、手続きが煩雑なうえに、複数の部署と調整や確認を行う必要があるため、仕事が完了するまでに時間がかかる場合があります。
BtoAの事例
楽天:楽天市場で培ったプラットフォームを「楽天ふるさと納税」として自治体向けに提供しています。返礼品の選定や発送といった業務を代行するプラン、クラウドファンディングを通じてふるさと納税を行うプランも準備しています。
LINE株式会社:LINE株式会社は自治体の公式アカウントを作成し、粗大ゴミの回収申し込みや支払いといった公共サービスの手続きをLINEアプリ上で行えるようにしています。ほかにも、不登校児童のカウンセリングもLINEを通して行うサービスを提供しています。
CtoA
CtoA(Consumer to Administration)では、個人が政府機関に対して商品やサービスを提供します。消費者が直接、政府や自治体と取引を行うビジネスモデルで、ほかのビジネスモデルに比べ案件数が少ないのが現状です。
CtoAの事例
所得税の支払い:e-Taxで個人が収入に応じて政府に納税することは、CtoA ECモデルに該当します。
ECビジネスモデルの選び方
ターゲット市場を調査して決める
事業で扱う予定の商品やサービスの購買意欲が高そうな消費者グループを調査し、ビジネスモデルを決定します。ターゲット市場調査では、以下のような項目を調べます。
- 消費行動パターン:大手サイトから購入する傾向にあるのか、小規模サイトから購入する傾向にあるのかなど
- 価値観:中古でも良いから安価な商品を好むのか、高価でも公式サイトで販売されている商品を好むのかなど
- プラットフォーム:好んで利用しているECプラットフォームがあるのかどうかなど
このようなデータを収集することで、BtoC、DtoC、CtoCどのビジネスモデルにするとターゲットにリーチしやすくなるのかがわかります。また、提供する商品やサービスの種類の方向性、利用するプラットフォームも決めやすくなるでしょう。
事業規模や必要な資金などから決める
どの程度の収益が見込めるのか、運営にはどのくらいのコストがかかるのか、利益が出るまでにどのくらいの時間がかかるのかなど、事業資金などの現実的な視点から決めることも大切です。
たとえば、BtoBやBtoAモデルでは、高単価での取引が期待できる一方、高い実績を誇る事業者や大企業が競争相手になる可能性があるほか、取引単価が高い分、必要となる資金も高額になる傾向にあります。リソースの限られる小規模事業者では、社会的信頼度や資金量、取引実績などで大手企業と対等に競って仕事を獲得し続けるのが難しいかもしれません。
一方、BtoCやCtoCモデルでは、一度の取引における収益は少なくなるものの、消費者のニーズに応えられる商品やサービスを提供できれば、安定した収入を得られる可能性があります。一日に何万人もの消費者とやり取りを行う規模の大きなショップと違い、商品に手書きのメッセージカードを入れるなど、小規模事業者ならではの細やかなサービスを心がけて個々と良好な関係を築くことで、顧客を獲得することができます。
このように、事業規模とビジネスモデルの相性からどのECビジネスモデルを採用するか決めることもできます。
自分のスキルを活かせるかどうかで決定する
自分のスキルを活かせるかどうかでECビジネスモデルを選ぶと、市場での地位をより確立しやすくなります。たとえば、以下のような考え方ができます。
- 自分で製品を作ることができ、消費者の動向を探るのが得意なら、BtoCの中でも消費者と直接関われるD2Cビジネスモデルや、CtoCが適していると考えられます。
- ブランディングやSNSの知識があるなら、業者が製造した商品を自分のブランド名で販売するホワイトレーベルが向いているでしょう。ビジネスモデルはBtoCが考えられます。
- デザインスキルに自信があるなら、CtoC、CtoBなどのビジネスモデルを採用し、制作したデザインを商品に印刷して販売するオンデマンド印刷を利用すると良いでしょう。
- 特定の商品を低コストで仕入れられるなら、BtoCでの卸売がふさわしいでしょう。
まとめ
Eコマース事業には、企業が消費者に商品を販売するBtoCやDtoC、フリーマーケットのように消費者がほかの消費者に商品を販売するCtoCなどのビジネスモデルがあります。政府機関を対象に商品やサービスを提供するビジネスモデルもありますが、社会的信頼度や資金量の観点から小規模事業者が参入するのは困難です。小規模事業者がEコマース事業を開始する場合は、BtoCやCtoCなど、個人を対象としたサービスを展開すると良いでしょう。
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よくある質問
ECサイトにはどんな種類がある?
ECサイトの種類には、ビジネスモデルの観点からだと以下の6種類があります。
- BtoC(企業から消費者へ)
- BtoB(企業から企業へ)
- CtoC(消費者から消費者へ)
- CtoB(消費者から企業へ)
- BtoA(企業から政府へ)
- CtoA(消費者から政府へ)
また、構築方法の観点からだと主に以下の2種類があります。
- Amazonや楽天市場といった既存のネットショップを活用するモール型
- 自分でECサイトを立ち上げる自社EC型
おすすめのECビジネスモデルは?
- サプライヤーから低コストで商品を仕入れて再販するBtoC
- 業者が注文に応じて消費者に商品を発送するドロップシッピングを活用したBtoC
- 業者に商品を製造してもらい、自分のブランドで販売するDtoC
- 契約期間中、消費者に定期的に商品やサービスを販売するサブスクリプション型のBtoC
ECビジネスの始め方は?
- 市場調査や分析を行う:インターネット上でアンケートに回答してもらうなど、ターゲット層の情報を集め、競合他社が販売している商品を参考にして、どのような商品が売れるのかを考えます。
- 販売する商品を決める:市場調査の結果とターゲット層や利益率、トレンドなどを考慮して販売する商品を決定しましょう。
- ECサイトを立ち上げる:既存のプラットフォームを活用するか、自分でECサイトを構築するかを決定しましょう。
- ブランディングと集客を実施する:商品の魅力が伝わるようにブランド名やロゴ、イメージカラーなどを決め、SNSなどに広告を打ち出して認知度を高めます。
- 分析と改善に努める:広告による集客効果などを分析し、さらに商品を販売するには何が必要かを考えたり、ECサイトの利便性を高めたりなど、サービスの質を高めていきます。
文:Yukihiro Kawata