※こちらはPlus Partner Weblifeによるイベントレポートです。
2023年6月7日に、EC向け出荷管理システムのShip&coとグローバルな物流サービスFedExと、Shopify PlusパートナーであるWEBLIFEの3社によるミートアップイベントを開催。 Shopify Plusを検討しているShopify利用者の皆様に向けて、Shopify Plusを活用したEC構築の事例や越境ECでの成長のポイントなどをお話ししました。
登壇者紹介本イベントでは、株式会社BERTRAND Bento&co、Ship&co代表のベルトラン・トマ氏と株式会社ウェブライフ代表の山岡 義正に加え、サプライズゲストとしてShopify Japan 株式会社のアカウントエグゼクティブである外山 児雄氏も登壇。 3名によるディスカッションの後、フェデラル エクスプレス ジャパン合同会社より、越境ECの物流について、トレンドのアイテムや発送時に注意することなど、現場目線のリアルなお話しを伺いました。
世界のスタンダードに近づく、日本のECトレンドの変化
EC業界のトレンドや機能の進化は目まぐるしく、特にコロナ禍において急激に需要も増えたことで日本のEC市場も大きく変化していきました。
カスタマイズの弊害への理解
国内企業のECサイトの特徴として、個別に受託開発されたカスタマイズ仕様のECシステムであることが多く、特に企業規模が大きくなってくるとその傾向は顕著です。
ブランド独自の施策やデザインを可能にするメリットはあるものの、高額のアップデートコストやシステムの複雑化、業務対応できる人材の属人化など過剰なカスタマイズによる問題が多くありました。
日本特有の過剰なカスタマイズ主義はECシステムに限ったことではありませんが、それによって2025年以降は年間最大12兆円の経済損失が生じることを経済産業省からのレポートも出ており、近年は既存のシステムに合わせて運用していくスタイルにシフトする企業が増えてきました。
日本のDX化に関する問題点
開発期間の長さが課題
日本とグローバルのECを比較した際に、構築開始からローンチまでにかかる時間の差が目立ちます。
海外では欧米、アジアなど地域を問わず、約3ヶ月程度でローンチし、テストマーケティングを経ながらデザインや個別の機能開発などを進めていくスタイルが一般的です。
Shopifyではアプリで機能拡張できるため、そういったスタイルにマッチしています。やりたい施策のために一旦アプリを導入し、成果が芳しくなければすぐに別のアプリに乗り換えて、フレキシブルにECを運用していくことが可能です。
日本では、前述のとおり個別のデザインや個別の機能を作り込んでからローンチされるため、開発に約1年〜1年半かかり、規模の大きなECサイトは2年以上になることもあります。
EC構築の際のポイントについて話す山岡
しかし、最近はコロナ禍によって「店舗が営業できないから早急にECサイトが欲しい」という要望が増えたこともあり、短納期でローンチしてテストマーケティングしていくスタイルが日本でも浸透していきつつあります。
WEBLIFEでは、追加開発が必要になる機能の場合は、競合と差別化するために必要か、リプレースの場合はその機能の利用率などで見極めて、重要なページのみカスタマイズのコストを集中させて、まずはシンプルに売ることができるECサイト構築をご提案しています。
外山氏からも、そういったシステムに合わせてECを運用する企業のほうが、マーケットのトレンドや最新のEC環境が手に入るShopifyの恩恵を受けやすく、売上を伸ばしていけるとのことでした。
越境ECや店舗とECを連携するOMOの普及
構築期間だけでなく、売り方も海外のスタンダードに合わせて変化しつつあります。
越境ECに対応するための機能やサービスが充実してきており、大企業でなくても海外に販路を広げやすくなりました。トマ氏もスモールビジネスで越境ECに取り組む企業が増えてきたことを実感されています。
トマ氏が代表を務める弁当箱専門店のBento&CoもShopifyで越境ECに対応している
山岡からは、海外でのWebマーケティングに関して、SEOやリスティング広告は高額になりがちですが、SNSを活用したプロモーションなら低コストでターゲットを絞ることができ、動画などでクリエイティブの工夫もできるため、テストマーケティングがしやすいことを挙げています。
また、オンライン・オフラインが融合された購入体験を提供するOMOの考え方も日本のEC化率が上昇しているにつれて普及し始めています。コロナ禍がある程度落ち着いて、気軽に外出しやすくなった今だからこそさらにOMOの重要性は高まっていくと予想されます。
Shopifyも注力するBtoBのEC化
外山氏は、BtoBのECのトレンドも高まっていることに注目されています。BtoBはBtoCに比べて取引額が何十倍以上になるため、市場規模も膨大です。
Shopify PlusではBtoBに特化した新機能が次々と実装されており、既にBtoCでShopify利用しているマーチャントからも、BtoB事業のEC化の需要が増えてきているそうです。
今まで営業担当がFAXやメールで行っていたBtoBの取引や在庫管理を、ECで一元管理することで業務効率を格段に高めることができます。
ShopifyのBtoB向け機能は卸売価格の設定や、金額によって銀行振込での支払い対応もできるため、トマ氏が代表を務める弁当箱専門店のBento&Coでは、BtoCとほぼ変わらないフローでBtoBの受注対応ができているそうです。
BtoB向けの機能が搭載されたShopify Plus
Shopify Plusのメリットと検討すべきタイミング
Shopifyのプランの中で最上位のShopify Plusは、最も多機能で利用料金も月2000ドル〜と高額です。
どんなECサイトがShopify Plusにすべきなのかは、一般的には一定額以上の売上目安などが言われていますが、外山氏からShopify Plusが選ばれる理由として、以下の5つの点が挙げられました。
- 拡張性の向上によるCV率、平均注文額向上の施策実施
- より堅牢なサーバー環境・不正注文の防止
- 越境ECの本格展開
- BtoBのECサイト構築
- 担当者によるShopify Plusの専用サポート
CV、平均注文額率を向上させる
上記の5つの理由のうち、拡張性の高さと高性能なサーバー環境について、外山氏は「攻めのShopify Plus」と認識しています。Shopify Plusの機能を活用することでアップセル、クロスセルを促す施策や、安定した環境でのフラッシュセールで計画的に売上を作ることができます。
売上額が一定を超えたからShopify Plusにするのではなく、これら機能を使って売上を伸ばしたいからShopify Plusにするというマーチャントの方が、成果が出やすい傾向にあるそうです。
トマ氏、外山氏、山岡によるディスカッション
越境ECで新たなマーケットを開拓する
Shopify Plusでは、1つの契約につき最大10サイトまでECを構築・運用することができます。
越境ECで外国向けのECサイトを持ちたい場合、既存のECサイトに翻訳ツールや複数通貨決済の機能を導入するという手段もありますが、国ごとに商習慣やシーズンは異なるため最適化には限界があります。
1つのサイトで管理できる方がリソースは少なくて済みますが、やはり国ごとにローカライズされたECサイトがあった方が年間のイベントに沿った販促もしやすく購入者も安心感があるため売上に繋がりやすくなります。
山岡からも、注文後の処理についてはある程度一元化し、ECサイト上で見せ方は国ごとに変えた方が望ましいとお話ししました。
AIがECにもたらす変化とShopifyの考え方
昨今、様々なWebサービスに、AIによるコンテンツ作成機能が実装されており、Shopifyも自動で商品説明文やダイレクトメールの件名を作成してくれる「Shopify Magic」が登場しました。
また、世界中のShopifyのストアがECモールになったアプリ「Shop」ではChatGPTと連携してAIが商品提案をしてくれます。
AIの導入はShopifyとしても積極的で、売上に直結しない部分はAIなどで機械化し、売上に直結するマーケティング活動などに人的リソースを注力できるような仕組みになっているとのことでした。
越境ECのトレンドと物流課題
実際に越境ECをするとしたら、今はどのような商材が売れているのか、海外へ流通させる際の課題をクリアするために何が必要なのかについて、トマ氏とFedExの方のお話しいただいたことをまとめます。
越境ECの発送業務をスマートにするShip&Co
商品を海外に送る際に一番の課題となるのが配送関連です。海外配送に対応してくれる運送会社やルートの確認に加え、税関の必要書類も揃えなければなりません。
EC向け出荷管理システムのShip&coは、シンプルな操作で送り状を発行できるWebサービスです。国内・越境問わず複数の運送会社での送料比較ができ、税関申告書(インボイス)も送り状とともにワンクリックで発行可能です。
出荷物の追跡情報もECシステムに同期してくれるため、発送完了メールも自動化することができます。
トマ氏によると、配送料は国内取引に比べて高額になるのは当然ですが、チェックアウトで商品代金とは別に送料が追加されると、購入意欲が削がれてカゴ落ちの原因になりやすいそうです。
対策のひとつとして、あらかじめ商品価格に送料を含めておくとチェックアウト時に価格が上がることはなく、カゴ落ち防止に効果があるとのことでした。
越境ECの人気品目と輸送の注意点
世界220カ国に物流事業を展開するFedExによると、いま日本の越境ECで人気の品目はアパレル、時計・アクセサリー、アニメグッズ、カメラフィルム・パーツ、トレーディングカード、自動車パーツ、ゲーム、フィギュアなどです。
食品やコスメも最近増えてきているようで、中東向けにはお茶が人気です。ただし、アメリカに食品を出荷する場合はアメリカ食品医薬品局(FDA)の認証が必要だったり、アルコール濃度の高いものなどは航空危険物に該当するため、有資格者が梱包や帳票作成しなければなりません。
越境ECで通関の手続きをスムーズにするには、輸出入の規制や条例をしっかり確認することが必須です。他にも発送時の注意点として以下の3点が挙げられました。
- 航空貨物運送上やインボイスに正確な情報を記載する
- HSコードを記載する
- 荷受け人の連絡先を明記する
※HSコードとは、あらゆる貿易対象品目を21種類で分類した6桁のコード。輸出入統計品目番号や関税番号とも呼ばれる。
税関で荷物が停滞する原因として多いのが、インボイスの情報だけでは商品の中身が把握できないケースだそうです。その際はすぐに荷受け人へ確認できれば解消されるため、連絡先は必ず明記しておきましょう。
日本の越境ECの物流が好調な理由
FedExでも、3年ほど前までは越境での配送はBtoBがほとんどだったそうですが、今は4割ほどがBtoCになっているそうです。特にEC対応は日本が順調に業績を伸ばしているとのことで、その理由として、「商材がクリエイティブで魅力的であること」が挙げられました。
前述のとおり、ShopifyのようなECプラットフォームと、Ship&Co、FedExのような物流サービスを利用することで小〜中規模の企業でも越境ECを始められる時代になっています。
各社のプレゼンテーション後、参加者同士のネットワーキングが行われた
WEBLIFE会社概要
2007年に株式会社ウェブライフジャパンを設立し、ECシステム導入のコンサルティングとしてEC-CUBEを中心に300社以上のECサイトを構築。2017年より事業拡大し、Shopifyに特化したECサイトの運用構築をトータルプランニングし、あらゆる業種や事業規模のECにおける課題解決をサポートしている。2022年からは日本の商習慣に合わせたShopify Appを提供するサービス「BiNDec」を開始。
Shopify Plus Partnerとして300以上のShopifyストアを構築し、2021年にはPlus Partner of the Yearを受賞。代表取締役は山岡義正。
本件に関するお問い合わせ先
株式会社ウェブライフ プロジェクト事務局
[email protected]
担当:藤川